第二十三章 加賀百万石との対決
「これより前田家を攻めるといたそう」
「はは!」
「しかし儂と幸村はこの季節、他の朝廷やら大名家への挨拶回りに忙しく出陣できぬ。本多忠勝が暇をしておるそうじゃから、代わりに総大将を勤めさせよう」
「それは名案かと。此度の戦では徳川旧家臣の働きぶりをご覧になれますな」
「それもある。それに何かと功を積ませて、重臣にしておきたいしのう。足軽組頭や足軽番頭ばかりでは扱える兵にも限界がある。位の低い者に兵を多く与えすぎては老臣達も五月蠅いしの」
「では、さっそく忠勝殿に委任状をお送りしておきましょう」
川を前に布陣した本営には本多忠勝を総大将に、大久保忠佐、榊原康政、鳥井元忠、向井正綱、花房職秀、井伊直政、中山輝守と屈強の武者が勢揃い。川を挟んで控える相手側の陣営には、総大将の前田利長をはじめ、村井長頼、奥村長福ほか、前田家の重臣が陣取っていた。兵力差は七千対九千。
鉄砲隊の向井正綱が、奥村長福隊に挑発を仕掛け、戦は始まった。長福隊の救援に向かう隙をついて、他の部隊は本陣目指して突撃。総大将前田利長二千目がけて七つの隊が四方八方から攻撃を浴びせる。
「本陣に金森隊が迫っておりまする」
「本陣が急襲を受けております!」
「向井正綱隊を本営に向かわせておる!何とか持ちこたえよ!」
「利長はどこへ行った!」
「砦に逃げましてござりまする!」
「長連龍隊が背後にあり!」
「何?陣を構えよ!狙うは長連龍隊!」
「奥村長福見参!」
「おお、前田家の重臣奥村長福じゃ!何としても捕らえよ」
「鳥井元忠の兵二百に当たらせよ!」
「申し上げまする!大久保忠佐隊が本営に到着!敵部隊を追撃に当たっておりまする!」
「よし!」
「砦を落としました!」
「前田利長隊がこちらの挑発に乗っておる。一気に押し潰せ!」
「前田利長を生け捕りにしました!」
「よくやった!」
「利長の命を引換に富山城は無血開城を申し出ておりまするが如何致しましょう」
「よし、では釈放いたそう」