第十九章 兄弟再会
「いよいよ徳川を滅ぼすときが来たか」
「度重なる負け戦で兵も疲れ切り、城内には僅かばかりの守備隊のみのようにござりまするな」
「よし、戦じゃ」
難攻不落と謳われた小田原城も兵がなければ只の城。守りの手薄な城に襲いかかった真田勢は、二の門、三の門と雪崩れ込み、城は簡単に落ちた。
「城にいた二十人以上の武将達を捕らえましてござりまする。処置はいかがなさいましょうや」
「我が方につくというのならば快く迎えよ。拒絶するならば野に放てばよい。悪戯に命を取ると儂の評判が悪くなるからな」
「上様!」
「何じゃ!」
「真田信幸殿が控えの間でお待ちしておりまする」
「何? 信幸が」
「父上」
「おお、信幸。久しいのお。どうであった、徳川での生活は」
「何不自由なく暮らしておりました」
「そうかそうか、よかったのう。で、どうじゃ、儂の所に戻ってこぬか」
「そうしたいのは山々なれど、簡単に戻るというわけにも行きませぬ」
「何?父の申し出を断ると申すか」
「心苦しくはござりまするが・・・」
「分かった。どこへなりと好きなところへゆくがよい。父は止めぬ」
「御免!」
「兄上は戻ってきませぬか」
「いずれ戻ってこよう。それにしても、徳川方の武将はほとんど儂の家臣になることを拒んだのう」
「三河武士の意地にござりましょう」
「旧武田家の家臣も断りおったわ」
「時期が来れば、我が方に味方してくれるかと」
「徳川の人材は目を見張るものがある。敵方につかれては厄介じゃ。監視を怠らぬようにしておけよ」