第十一章 兄弟対決
新春
「殿、新年あけましておめでとうございまする」
一同「おめでとうござりまするー」
「うむ。めでたいめでたい。皆の者、飲め、歌え」
「殿、今年はいよいよ徳川征伐でござりまするな」
「そうじゃな」
「上野にまず攻め込みましょう」
「分かった。戦の準備はそちに任せよう」
「はっ!」
*
「殿、敵方は打って出て参りましたぞ」
「おお、久方ぶりの野戦じゃ。おお?あそこに見えるは我が子信幸ではないか。よほど家康に重宝されていると見える。しかし家康も酷なことをするのう。親と子を戦わせるとは」
「殿、戦の準備が整いましてござりまする」
「よし、まずは陽動作戦じゃ。幸村隊と久秀隊は家康の本陣を脇から突け!」
「はっ!」
「頼康隊と長政隊は西の砦の手前にて待機!」
「仰せつかまつった!」
「勝永隊と儂は家康の本営まで前進じゃ!」
「御意!」
戦場を駆け抜ける幸村の騎馬隊千百を察知して、徳川家康隊千四百がこれに応じて交戦。千石久秀隊八百は兵力減退のため後方へ退いた。本営が窮地とあり、徳川の他の部隊が本陣に駆けつけ、砦の守りが薄くなったところへ、浅野長政隊千六百と、矢沢頼康隊千四百が渡辺守綱の守る砦を急撃、屈強な守綱隊六百が打って出たところで、長政隊と頼康隊は苦戦を強いられた。
「よし!もうそろそろ良かろう。敵は十分に引きつけた」
手綱を引いた幸村が本陣へ取って返そうとした所へ、新たな敵の部隊が目に飛び込んできた。
「兄上!」
「おう、幸村ではないか!」
「我ら血を分けた兄弟なれど、此度は容赦は致しませぬ」
「よし!かかって参れ。相手をしてつかわそう」
「勝負!」
幸村隊と信幸隊が遭遇戦を繰り広げ、そこへ昌幸の本隊二千が信幸隊の脇腹を突き上げたために、信幸隊はもろくも潰走状態となった。
「兄上、御免!」
信幸は戦場を辛くも脱出、九死に一生を得た。