第一〇章 治安維持
「駿府城は落ちた。さて、次はどうする」
「このまま一気に浜松城を攻め落としたいが、甲府城からしか出陣できぬな」
「徳川との連絡線を絶った故、敵も援軍は期待できまい」
「かといって、上田城からでは遠すぎて攻められぬわ」
「春が来るのを待つしかないか」
厳冬
「寒いのう」
「今年は深く積もりませなんだが、大雪になれば出兵できませぬな」
「冬ぐらい戦をやめねば領民達に嫌われてしまうわ」
「領民と言えば、このところ松本城、甲府城、駿府城の治安がとみに悪化しているそうにござりまする」
「申してみよ」
「はっ!城下にて宿場町を開設したところ、賭け事が流行し、ならず者共が市中を我が物顔で練り歩き揉め事を起こしておるそうでござりまする」
「ほう」
「それにここのところ戦続きでした故、夜になると野武士どもが村々を荒らし回っているとの報告も入ってきてござりまする」
「けしからんな」
「春になれば金銭収入がござりまするが、治安が悪化していては、思うように税の取り立てもままなりませぬ。金銀兵糧、馬鉄砲などの輸送にも支障をきたしましょう」
「ううむ、何か対策が必要じゃの」
「各城主に命じて、治安の回復を図らせては如何でござりましょう。さしあたっては城下の警護を強化いたしては」
「よし、そちにすべて任せた!」
「ははっ!」