第九章 駿府侵攻
「次はどこを攻める」
「北越後に溝口と佐久間安政の守る城が二つござりまするが、山深きところ故、道が悪く上田城からは出陣できませぬ」
「それに武将も二人だけじゃ。滅ぼすのは簡単じゃが、獲った城を守るのが大変でござろう。上田城から救援の兵を送れませんからな」
「ではいよいよ徳川と事を構えるか」
幸村「背後の前田家が気になりまするな」
「しかし目下の所、前田家は越前北庄城の丹羽長重殿と交戦中にござりますれば、当家に構っている暇などござらぬのではないでしょうか」
「それもそうじゃ。そういえば、駿府城と浜松城を見落としていたの」
「この二つの城は今の所徳川の支配からは離れておりまする」
「太閤殿下の国替えで、家康を関東の田舎に追いやったのじゃったの」
「徳川の上野を攻めるか、徳川の旧領駿府と遠江を攻めるかでござりまするな」
「堀尾家と徳川家はよしみを通じておりまする。我が領内に侵攻する企てを立てているとあらば、共闘してやってくるでしょうな。攻められる前にこちらから攻めて、連絡線を絶っては如何にござりましょう」
「よし、此度は駿府城を攻めると致そう」
*
昌幸「おお、あそこに見えるはそちの父君ではないか。親子で槍を交じらわせばならぬとは、何とも皮肉な縁じゃのう」
浅野長政「これも戦国のならいなれば致し方なきこと」
「よう申した!堀尾吉晴の守る駿府城など一捻りにしてくれるわ!」
伝令「殿、一大事にござりまする!」
「んん?どうした」
「徳川の援軍が到着いたしましてござりまする!」
「なんと!」昌幸は目を疑った。「おお、あそこに見えるは我が子信幸ではないか」
「父上!」
「まさか儂まで父と子で戦場で槍を交える事になろうとは・・・ううむ、皮肉じゃ」
が、今回は駿府城が易々と落ちたため、父と子が槍を交えることはなかった。
「いずれ兄者を取り返せるときが参りましょう」
「そうじゃな…」