第十二章 武田包囲網
「既に充分の領土を手に入れた。儂は甲斐守護となるぞ」
「おめでとうござりまする」
「これで兵を多く率いることが出来るな。下野守護と相模守護の役職も余っておる。いずれ適当な家臣に与えよう。さぁさぁ、皆のもの、飲め飲めぇ。わははははーー!」
「殿!殿!」
「何じゃ何じゃ、目出度い席に五月蠅いのう」
「武田・・・、武田包囲網なるものが敷かれたようにござりまするー!」
「なんじゃと!」
あまりの衝撃に、勝頼の手から杯がこぼれ落ちた。
信茂「殿、ようやく武田包囲網の概要が明らかになりましたぞ」
幻庵「包囲網に加わった大名は徳川家康をはじめ、上杉景勝、真田昌幸、伊達政宗、最上義満、相馬盛胤にござりまする」
信君「真田まで裏切ったか!」
勝頼「おのれ昌幸!兵が少ない故手加減して見逃してやっとったが、この戦が片づいたら真っ先に攻め滅ぼしてくれん!」
伝令「殿!一大事!」
勝頼「何事じゃ!」
「相馬盛胤の城より太田城に向けて兵が進軍したとのことです。数は3万!」
「うむ!」
「殿!一大事にござりまする!」
「申せ!」
「米沢城の伊達政宗の兵が黒川城に向けて進軍!その数八千」
「分かった!」
「殿ーーー!!」
「何じゃ何じゃ騒々しい!次はどこの大名じゃ!」
「海津城の真田の兵六千が春日山城に向けて出立!」
「殿!一大事!一大事にござるーーー!」
「あぁあ!次から次へとこうも虫の湧く如く!次はどこじゃ!」
伝令「徳川家康の兵三万余が小田原城に向けて進軍中!」
伝令「新発田城に向けて伊達の軍勢三万が北上!」
勝頼「偉いことになったのう盛信」
信盛「一個一個早急に撃破して行くしかござりませんな」
勝頼「小田原城には福と佐竹衆を遣わして指揮を執らせる。儂以外で徳川と互角に勝負できるのは佐竹衆しかおるまいでな。小田原城へ続く街道沿いに鉄砲櫓を増設してある故、おそらくは足止めできよう。新発田に向かっておる軍勢は儂自らが軍を率いて殲滅いたそう。黒川城へは伊達政宗自ら八千を率いて進軍中らしいが、その程度の数ならば何とか持ちこたえよう。問題は太田城じゃ。あすこも鉄砲櫓を増設しておいたが、果たして相馬は強者と聞く」
氏照「全軍で当たれば何とかなりましょう」
勝頼「じゃとよいのじゃがな」