第十二章 晴信の恫喝
武田晴信は次なる目標を定めていた。出羽の国の国主、安東愛季である。
酒田港より海洋戦術に長けていた上杉の旧臣柿崎景家、長尾政景、斉藤基信を出港させ、海路より敵の港を攻撃させた。
港の救援に向かった安東家の数隊一万が出払った隙に、山形城より、晴信率いる騎馬隊本隊が安東家の居城檜山城に接近、途中安東家の一部隊と遭遇し、これを打ち破ると、一挙に檜山城へと進軍した。
城を前に陣を張っていたところへ、安東家より停戦の使者が訪れた。
安東家家臣「晴信殿、この通りで御座る。此度は何卒矛を収めて頂きたい」
晴信「とはいうものの、我が方も大部隊を率いて、こうして遠路はるばるまかりこしておる。ただで兵を引き下げるというわけにはいかぬな」
晴信はにんまりと笑うと、側に控えていた小姓に甘い視線を投げかけた。
「家来共の恩賞のこともあるしのう。米も随分と食べ尽くしたわ」
安東家家臣は訝しがった。「して、和議の条件は」
「金七万を所望いたそう」
「七万!??」
「安東家には金が二〇万はあると聞く。七万くらいは痛くも痒くもござりますまい」
「し、しかし・・・」
「既に我が隊は先の勝ち戦でいきり立っておる。和議の条件に応じぬというのなら」
涼やかな目で家臣を見据えていた晴信は、その同じ目で突如として使者を睨みつけた。
「このまま踏み潰してしまうぞ!」
晴信の突然の怒気に、安東家家臣は平伏した。