第二章 勘助の目論見
晴信「しかし、まことに甲斐の国には畑が少ないのう」
勘助「致し方御座りませぬ。今は国力を蓄え、時期を見計らって隣国に攻め入るのが上策かと」
飯富虎昌「隣国とはどこのことを言うておるのじゃ」
勘助「これは飯富殿」
「言うてみよ勘助。どこのことかと聞いておる」
「それはもちろん武蔵の国の太田家、それに上野の国の長野家に御座りまする」
「ふん!お主、まさか今川義元殿の駿河をねろうていたのではあるまいの」
「滅相も御座りませぬ」勘助は目を丸くして両手で制した。「今川義元殿と言えば、東海一の弓取りとまで呼ばれ、名を馳せた御仁。そのような蕪村な考えなどこれっぽっちも抱いてはおりませぬ」
「嫡男義信殿の傅役である儂の目を誤魔化せるとでも思うてか」
「いえ、けしてそのようなことは」
晴信「まぁよい勘助」
「ははっ」